幻惑されて

「幻惑されて」

甲斐バンドが解散したことは、言葉で分かってても実感がなかった。
メインの甲斐が早々に始動していたからということもあったけど、まだ心情的に幼かったかもしれない。
年末の武道館公演も行われたけど、実際行ってみたら高揚感が違うのは感じてた。
それでもまだ甲斐が曲を作って発表し、ライブをやってくれるだけでもうれしかった。
個人的にも仕事を覚えたてでいろんな意味で楽しかった時期かもしれない。
これはまた数年後のやってくることになるけれど、いい時もあればそうでない時もあるわけで、そうでないときに行われたのがダブルイニシアティブ。
これであの「マッスル」をバラード調でやってしまったこと、本牧ライブと同じ曲順でライブをやってしまったことに、悪い意味で裏切られた気分になり、しばらくライブからは遠ざかった。
以前の様に
熱中できる環境でなくなったことが大きかったんだけど、それでも甲斐の動きは気にしていた。

と、ある日、朝新聞を読んでたら広告の中に“KAIFIVE”という文字を見つけた。
これって、甲斐の事じゃないかとピンと来て、すぐに調べたらユニットを組んでいたことが分かった。
広告はそのライブ広告だったわけだけど、ライブには行く気が起きなかったものの、どんな曲を・・・という想いで、アルバム『幻惑されて』を購入した。

先行シングルだったタイトル曲「幻惑されて」を聴いて、正直驚いたよ。
なんと ギター1本の世界からハードロックへ・・・
ハードロックには大いに抵抗があったけど、シングル「幻惑されて」を聴いて、この曲は当初例外だった。
激しい曲であることは確かなんだけど、キチンとうねりがあってひたすらストレートにということでもないところに甲斐の匂いがあった。
こんな曲もかけるんだ・・・そんな想いと、以前は色気・色香と書いたこともあったけど、はっきり言ってエロく感じる歌詞も、良く捻られて書かれていた。
この時、相棒としてのギタリスト・ヤッチの存在が大きかったことは疑いようもない。
ギターの音色のエロさ、歌詞のエロさ、そこに独特のニュー甲斐ワールドを繰り広げるボーカルが見事に絡み合っていた。
甲斐バンドの田中一郎がこの曲を奏でてみたいと言ってた時期もあったようだけど、当時の一郎ではこのエロさは出せなかっただろうな。

時がかなり立ったけど、時としてこの曲を聴くと、妙に感じが良くなる。
あのうねり・・・それがそうさせているかもしれない。