嘘-たわごと

懐かしき甲斐バンド、甲斐よしひろを振り返りながら、時を思う

甲斐バンド

たわごと~冷血(コールド・ブラッド)5

冷血(コールド・ブラッド)

「冷血(コールド・ブラッド)」

バンドにハードボイルドのエッセンスみたいなものを感じた時、このエッセンスは何処まで行くのかなと思っていたことがあった。
多分、これを感じなかったらバンドは聞かなかったと思う位、魅力的に思っていたんだ。
単なるエッセンスからスリルとサスペンスを織り込んでいったドラマ感は、「冷血(コールド・ブラッド)」で頂点を迎えていた。
郷愁とか哀愁みたいな感覚も大事だけど、アマチュアの世界からプロの世界に飛び込み、ただのハッタリ屋で終わることなく昇華していったのは、この世界は自分たちが思うほど低レベルではなく、独特の世界観を作り出そうとしていたことに他ならない。
郷愁の世界よりもハードボイルドエッセンスに気が付かなければ、このバンドを聴き続ける意味は何処にもなかった。

これがはっきりしたのはアルバム『破れたハートを売り物に』で、そこに至るまでもそのエッセンスは垣間見えていたけれど、ここにきて明確になった。
そこからスリルとサスペンス盛り込みながら、高みに上り詰めていった。
大したものだと思ったのは、こういう曲を作りながらもきちんとメッセージが込められていたということ。

♪ 恨んでも恨んでも振り払えないものがある
 泣いても泣いてもきれはしないものがある ♪

ここが分からなければ、ただひたすらに郷愁だけが、、、という淋しいものになっていた。

一人や一組のミュージシャンやアーティストを聴き続けてるのなら、目指す方向は同じでありたいと思っていた。
多分、若かったんだろうね。
この曲は、意外と売れると思っていたけど、結果が意外なものだった。

でも演奏ではなく、ステージでの演出が非常に珍しいものだったのは意外な発見だった。





たわごと~野獣 -A WILD BEAST-2

野獣 -A WILD BEAST-

「野獣 -A WILD BEAST-」

この曲にはいろんなバージョンがあった。
ショートバージョン、ロングバージョン、アナザーバージョン。
覚えてるだけでも3つかな。
正直って、この曲がリアルで出た頃はバンドにのめり込んでたから、シングルも買ったけど、当時から違和感があった。
曲調も詞を読んでみても、何を言いたくて、何をアピールしたかったのがつかめなかった。

ライブで聞いてみても、ライブの流れとしてこの曲だけが浮いてたし、ハードボイルド感はその要素が作り手にあったとしても行きついたところがこの曲であっては、もはや流れで作ってしまった感が感じられる。
ボブ・クリアマウンテンのmixだったから聞くこともできたけど、そうでなければ結構無惨な曲だったかもしれない。

バンド解散後「ポイズン80」に収録されていたけど、この曲のアナザーバージョンはその中でも印象は若干異なってた。
この曲のモチーフはボクシングだけど、ボクシングというのはスポーツというより格闘技と言った方がいい。
けれど、ストレートな格闘技ではなく、勝負の挑むときの心持や試合におけるそれは紆余曲折がかなりあるはず。
当時は格闘技の代表のようなものだったけれど、そこにこの曲とマッチしない印象があるようにも思える。

何故、この曲に様々なバージョンがあって、ジャケットにも趣向を凝らすほど力を入れていたのか。
思い違いしかなかったという他ないかな。
野獣 -A WILD BEAST-①






たわごと~アルバム『GOLD/黄金』5

GOLD

アルバム『GOLD/黄金』

多分、このアルバムでバンドに対するイメージが一新されたと思う。
ダーティで野卑なイメージが根強く残り、そこを発展させて昇華させていったのはアルバム『虜-TORIKO』までだったと思う。
けれど、そのアルバム『虜-TORIKO』はそれまでの印象と局面が変わった印象が同居していた。
それがパッと光が差し込んだ世界が繰り広げられたのが、アルバム『GOLD/黄金』だった。

ハードボイルドエッセンスを多く秘めながら、それでいて明るく感じるこのアルバムは音的にも昇華し、次作『LOVE minus ZERO』に至るまでの過渡期という位置づけではなく、このアルバム自体の独特な世界が繰り広げられていた。
それは当時LPレコードとして発表されたこのアルバムが、A面では「マッスル」、B面では「胸いっぱいの愛」という趣も描かれる世界も異なった大きな柱があったからだと思ってる。
このアルバムはGOLDという言葉で表現されていたトータルアルバムなんだけど、1曲1曲の世界がまるで違っていた。
でも、大きな柱で構成されるA面の世界とB面の世界はそこを中心にそれぞれ描かれる世界が違っていた。
これが良かったと思う。

バンドが作ってきた世界はアルバムごとで異なってるけど、『GOLD/黄金』は3指に入るアルバムだ。
バンドが解散を目の前にしてその代名詞となるアルバムを作りたいとし、作られたアルバムは『LOVE minus ZERO』だったけど、代名詞にはなり得なかった。
それはその時点で既に代名詞になるアルバムがあったからだ。
でも、『GOLD/黄金』で新たな世界が作られていなければ『LOVE minus ZERO』はなかった。
その時点でもう既に代名詞なってたアルバムも光り輝くことは中田と思う。






たわごと~射程距離3

射程距離

「射程距離」

アルバム『GOLD/黄金』が発表されてもしばらくの間、この曲はライブでは取りあげられなかった。
ライブという熱狂の坩堝の中では似合わないと思われたかもしれない。
そういうこととは無関係だったかもしれなかったが、この頃取っ付きにくそうな曲だと思ってた時期があった。

ロッキュメントで取り上げられたかもしれないけど、行ってないので当然のように記憶には残っていない。
でも、この頃かな、この曲を時に聞くようになったのは。

なんとも雰囲気があって、艶めいた曲だと思う。
以前の「カーテン」とはタイプが異なるけど、時間が経って艶めいた表現が変わって詞の一つ一つが際立ってるような感じがしてる。
それでいてライブ模様の終焉模様の一つの表現なのかもしれない。

♪ カーテンおろすのは 海の潮が満ちる前のコールサイン ♪

このフレーズが艶めいていて結構気に入ってる。





たわごと~胸いっぱいの愛5

「胸いっぱいの愛」

この曲は2008年に再収録されていた。
リメイクされたようだけど、何の意味もなく、アルバム『GOLD/黄金』に収録されていた曲の出来がかなり良く、アレンジ仕様もお気に入りでこれ以上ないと言いうものだっただけに、2008年のリメイクは意味が分からないどころか、駄作になりかけていたので逆に腹が立っていた。
作り手、歌い手と同様、曲にも旬というものがある。
アルバム『GOLD/黄金』の頃は、甲斐のボーカルにもノビがあって艶もあったし、歌い手としては最盛期だったので、お気に入りの中のお気に入りの曲となっていた。
バンドのライブ演奏としては、「THE BIG GIG」の時だけだったかもしれない。

甲斐がソロになったばかりの頃、演奏されていたことがあったけど、何度聞いてもアルバム『GOLD/黄金』に収録されたものが最高だった。

歌詞とか言葉に裏打ちされたものはないけれど、リズム感とテンポがいいナンバーで、バンドの曲としては珍しく、ドライブ中に聞いているのも何故かハマるような曲だった。
この曲を聴いて、改めてバンドが明るくなったと感じたことを思い出す。
アクが強いとかクセがあるとかいうイメージが強い中、そういう雰囲気とは無縁だった。
この曲もまた、甲斐にはこういう曲が書けるんだという発見があった。





たわごと~SLEEPY CITY3

SLEEPY CITY 

「SLEEPY CITY」

ストレートというか、捻りがなくポップで軽快なナンバー。

甲斐のイメージからするとアクが強いとかクセがあるとか、いわゆるこだわりがるような曲が連想される。
それでいて、甲斐本人は否定するけど、曲のワンフレーズにメッセージみたいなものを感じることが良くありがち。

甲斐本人はロックをやりたがっているのだから、こういう曲もそれまでの活動の延長上にあってちっともおかしくはないんだけど、それにしてもこの曲はイメージとは違う。

ロックに対する世間的なイメージとして、叫びとか歌詞がよく聞き取れない、意味が分からないと言うことがあると思うんだけど、この曲も歌詞に魅力を感じてはいけないんだろうな。
軽快でポップなイメージを、アップテンポなイメージで表現してみたらこういう曲になったという感じがする。

バンド終期には良く取り上げられていて、ライブの盛り上がりに加速度をつけるにはもってこいの曲だった。





たわごと~危険な道連れ4

危険な道連れ

「危険な道連れ」

どこか歌謡曲臭がするこの曲は、逃避行もの3作の2曲目。
逃避行ものにスピード感など必要ないから、ある意味、この曲のアレンジは正解だった。

甲斐はその昔、ロック詩人になりたいと言っていた。
これはアレンジが思う通りに行かないか、音でどういう具合に表現して言っていいのか分からなかったことの裏返し。
だから、バンドの曲は音的にもう一つという時が長く流れていた。
それが表現できるようになって、それでいて詞の世界も独特の匂いが色濃くなった感じがあった。
それがハードボイルド。

この世界を光そのものと取り巻く状況を直線的に描いた曲と、光を目指し闇という障壁の向こう側にある物としてそこを目指していく曲とが多くなった。
これはバンド解散後も続いていくのだけど、そこには様々なドラマ性と想いが渦巻き、その匂いみたいなものが好きだった。
「危険な道連れ」はそういう意味でのアプローチもあったけど、アレンジの世界に棘がなさそうな感じが気にっていた。





たわごと~MIDNIGHT4

「MIDNIGHT」

男の涙は、ひっそり人知れず流すもの。
この思いは今も昔も変わらない。
自分はそうしてきたし、息子たちにもそう言い聞かせてる。

これでも小さい頃は泣き虫だったんだよな。
多分、中学生になった頃から涙は流さなくなった。
特にきっかけがあったわけでもないけど、人前で泣くのは恥ずかしいとどこかで思ったんだよな。

「MIDNIGHT」を聴いた時、そんなことを思い出してた。
この曲はそういう男の部分と家庭を持った男の責任感、そこまで自分は来てしまった時の感慨を歌った曲のように思えた。
時代を切り取るのがロックなら、時に今を起点に遡ってみるのもロックの要素。
時代というより時の表現者であるのがロックの基本かもしれず、そういう意味ではこの曲も見事なロックナンバーだった。





たわごと~ムーンライト・プリズナー3

「ムーンライト・プリズナー」

デビュー当時は、女を魔女に見立てて書いてた曲が結構あったような気がする。
世界観は全く異なるけど、「ムーンライト・プリズナー」を聴いて、「魔女の季節」を思い出してた。

月明かりに囚われた人、それは得も言われぬ妖艶な悪魔・魔女。
魅入られたら最後、生贄とされてしまいそうな感覚は、深い情愛みたいなものを感じる。

軽快ではないけど、ダンサブルでまとわりつきそうなこのメロディは、パターンを変えた他の曲と合わせてロックンロールナンバーとしてライブ途中、数曲まとめてやったら面白いかもしれない。
どうも、ノリにくく歌いづらい曲だけど、そのリズム感に囚われてしまうと、抜け出すのが難しいみたいだ。





たわごと~マッスル5

マッスル

「マッスル」

後期甲斐バンドの中では、メチャクチャ好きでお気に入りの曲だった。
郷愁の世界からハードボイルドへの転換は、バンドの中にそういうエッセンスがそこかしこに見受けられていたからハマったという感じで、その代表曲のようだった。

ライブ「THE BIG GIG」は当時の新譜『GOLD/黄金』からの曲が多かったけど、何故か「マッスル」は演奏されなかった。
まだバンドのファンに成り立ての頃、「THE BIG GIG」が終えた後、しばらくライブを吟味してた時、何故この曲をやらなかったのだろうと不思議な気持ちになってた。
ライブのラインナップとして、ライブの趣に合わなかったのかとも思ったけど、アーティストが新譜を発表し、その後にイベントをやる時、新譜からのナンバーを入れないなってことは考えられなかった、
1983年だか84年の年末ツアーの時は、軽くMCを入れた後、「THE BIG GIG」ではやらなかった曲を、、、と言ってこの曲が演奏された。
バンドの曲はライブの時、一緒の歌うのが常だけど、その時の「マッスル」は、呆気に取られた感じになって歌うことなくステージを見つめていた。
最高の演奏と歌われっぷりだった。

バンド解散時のPARTYツアーで、この曲は取りあげられるんじゃないかと思ってたけど、それもなかった。
何故かつい最近になるまで、バンドスタイルでの演奏がなかったのが不思議な感じを強くしていた。

甲斐がソロになった時、この曲をバラード調でやったことがあった。
そういうアプローチもあるんだなとは思ったけど、それもバンドスタイルの演奏があったればのこと。
この曲には詞の紡ぎ方で、様々な演奏方法があるんだと思ったけど、そういうのは基本があったればの話。

不遇で貴重な曲にしてしまったのは、作り手書き手の甲斐自身。
見事にハードボイルドエッセンスが満載となってるのに、敢えてなのかそこに目を瞑ってしまってる。

この曲は今でも好きでお気に入り。
その時のバンドのイメージを強くしてたからね。
でも、この曲を扱う甲斐はその逆だな。




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