「最後の夜汽車」

スポットライトは どこかのスターのもの
陽のあたらない場所を 僕は生きてきた
ふりそそぐ白い 月あかりにさえ
肩をすぼめては 目をとじてきた
君が乗った 最後の夜汽車が
僕の街を遠去かる

拍手が鳴りやみ 客がいなくなっても
歌いつづける 悲しいシンガーのように
僕はいつでも 冷たい君に
苦い涙を 歌いつづけた
君が乗った 最後の夜汽車が
僕の街を 遠去かる

僕が淋しいって 言ったら
あの人はバカねって そっと微笑った
ほほに優しく 手をやりながら
僕しかいないって 言ってくれた
君が乗った 最後の夜汽車が
僕の街を遠去かる

白い月あかりの その裏側で
僕はゆがんだ 顔を洗った
白い月あかりの その裏側で
涙のかけらを 洗いおとした
君が乗った 最後の夜汽車が
僕の街を遠去かる
君が乗った 最後の夜汽車が
僕の街を遠去かる

君が乗った 最後の夜汽車が
僕の街を遠去かる

(作詞作曲:甲斐よしひろ)

アルバム『この夜にさよなら』でこの曲が発表された1977年ではなく、後に甲斐バンドが初めて武道館ライブを行って発表されたライブアルバムのおまけシングルとしてくっついていた演奏が最高で、最も印象に残ってる。
このアルバムに収録されていた曲の中には、これ以上の演奏はなかったものがあったりしたけど、そういう意味ではこの曲は別格だった。
夜汽車というフレーズは今では死語のようになってしまったけれど、憂いと色気と様々な思いと情景が感じられた言葉だった。
甲斐の好む言葉は甲斐の好む情景の一つであった星を感じる夜空と混じり合い、それを生かすためのテンポとアレンジはこの1979年武道館ライブの頃が最高で、甲斐と甲斐バンドが背負っていたものを感じた。

ヒット曲が出ようが出まいが、自分たちのやり口とやり方が徐々に積み上げられ、正にライブバンドだという評価を感じた曲で、この世界に入り込んだ者にとっては憧れの的のような存在にもなっていたように思う。