情景が思い浮かぶような詞の紡ぎ方。
デビュー前後の甲斐の特徴の一つだけど、夏へ向かってまっしぐらのようで紆余教説がある情景が書かれていた。
恋愛の向こう側とかもつれ合いを描くことが多く、どうしても表現された裏側の情景が浮かぶことはあるけれど、タイトルとは裏腹の奇麗な情景を感じてしまうこともあった。
当初「白い夏」というタイトル通いされていたところ、「黒い夏」というタイトルに落ち着いたのは、甲斐の想いが実はそこにあったと言うことかもしれない。
この曲で感じる情景は、遠くそれでいて田舎に幼少期住んだことがあるものにとっては懐かしいものかもしれない。
懐かしさを感じさせる情景は、貴重な財産だと思う。
自分の生い立ちを詩に落としてみたら、そして自分の思い描く音楽に合わせてみたら、曲が出来上がっていたというのが「黒い夏」だったのかもしれない。

自分の生い立ちをどこかに匂わせ、一つの情景を描いてみる。
これも和製ロックの一つの在り方だったのかもしれない。
日本の情景は日本で育ったものなら誰だって持っているのに、表現されることが少なくなってるような気がする。
演歌のようでもあり、ここに固有の世界が転がっている。