カーテン

「カーテン」

アルバム『この夜にさよなら』まで書かれた曲は、プロデビュー前に罹れていた作品がベースとなり、それまでの経験と想いからくるモチーフがほとんどだった。
だから、郷愁を誘ったり、そこから出てくる風景と心象風景が主だったものとして、聴き手の耳を誘っていた。
最初から都市型人間安なんていないし、そこに惹かれるものは多分にあったと思う。
しかし、これだけでは詰まってしまうことは目に見えていた。
だから、時が経つにつれて、バンド自体に意識するとしないとにかかわらず、ダレたようなところが出てきてもおかしくはなかった。
バンドのリーダーであり、ほとんどの曲の作り手であった甲斐自身が、自ら持ってたモチーフの切り口を変えていく刺激を得なければならず、そういう意味ではカバーアルバムを曲を知らないミュージシャンと共同作業して作っていったことは、いずれやらなければいけないことだったと思う。

で、出てきた新作アルバムの1曲目がこの曲だった。
風景とか心象風景とか言うものとは異なり、キーとなるベースは変わらないものの、情景たっぷりの曲が出てきた。
それまでも、こういう情景を感じる曲はあったものの、より濃度という濃さの趣が如実なものとなったのはこれが初めてだったのかもしれない。
切り口を変えて別の姿を見せてきた、、、そんな感じがした。
想像力を働かせれば、艶っぽいとかなんとか言われそうな曲だけれど、情景感がタップリなこの曲は後に色濃いものとなって効果が出ていた。
同じようなエッセンスをいつも同じ切り口で出し続けると、そうそうに飽きられることもあるだろうから、それまでとは異なる姿を見せる必要もあったという意味では、注目すべき曲だったと思う。