「眩暈のSummer Breeze」

1996年の甲斐バンド差結成には参加できなかった。
それから4年で、甲斐がいうところの本格的再結成は、先行シングルを含むオリジナルアルバムを発表することで始まっていた。
今にして思うと、甲斐バンド再結成ということながら、大森信和の病状を察するに至り、大森のためにも甲斐バンドを再結成させるならこのタイミングしかなかったということかもしれなかった。

そのオリジナルアルバム『夏の轍』の1曲目に入っていたこの曲、その背景を知る由もなかったこちら側からすれば、あの甲斐バンドが帰ってきたという感慨に浸るには十分だったように思う。
甲斐バンドのメンバーも高齢化し、聞き手も同時に高齢化する中、1986年以前のような盛り上がりをするにはこの時のタイミングしかなく、しかもこの曲に漂う怠惰なムードと匂いは、以前の甲斐バンドの匂いそのままだったと感じていた。

『夏の轍』の1曲目には「アナログ・レザー」をという声もあったようだけど、この曲でよかったと思うのはいきなり盛り上がり最高潮に達するには、前がしっかりしたものでないと、と言ってたような気がして、この曲でよかったという想いが強い。