GOLD

「マッスル」

ボクが初めてライブに行ったのはBIGGIGだと何度も書いたけど、そのライブは当時の最新アルバムであった『GOLD』からの選曲が多かった。
当時はそんなことも知らず、ライブ終了後の数年は甲斐バンドのアルバムをむさぼるように聞き込んでいたことを思い出す。
ライブでの観客へのインタビューを聴いて、そうだよなと思ったのはアルバム『GOLD』の珠玉の曲は「マッスル」だったということ。
この1983年の年末に行われた武道館公演だったのか、翌年の武道館公演だったのかは思い出せないけど。この曲はBIGGIGで演ってない曲だと前置きして、武道館公演の終盤で演奏された。
これだよ・・・そう思った。
骨太なイメージもあり、野卑なイメージとハードボイルド的エッセンスがあった甲斐バンドでは、これまでなかったことが不思議になる位、似合ってた曲だと感じていた。
この演奏で、これからしばらく演奏されるだろうと感じた感覚は、見事なまでに裏切られ、甲斐バンドが解散して甲斐よしひろがソロになったあるライブで、なんとバラード調にアレンジされて歌われた。
バカなことすんなよ、甲斐の感覚も思い切り歪んだな・・・
そう感じて、このライブ以降、何年も甲斐関係のライブには見向きもしなくなった。


 人は心の生きもの。
頼り頼られ、それでいて自分をしっかり持っていないと風船のようにどこかへ飛んで行ってしまう生き物なのであり、それでいて精神的になかなか安定しない。
思うようにならないのが心情そのものなのであり、だからこそ生きてることに面白味を感じるのだけれど、硬く硬く揺らぐことない心情というのはどこかで夢見ていたいと思うもの。
そんなことを「マッスル」を聴いていると感じるんだ。

これは甲斐バンドを聴き始めた頃も今も変わっちゃいない。
変わってしまったのは甲斐バンド、甲斐よしひろであり、数年前「マッスル」をやっと原曲アレンジでやったけれど、歯が浮きそうな演奏で曲に隠された魅力など、微塵もなかった。

しかし、この曲は個人的に思い入れが相当強い曲だ。
もう脳裏に焼き付いてしまい、話されないような1曲になってる。
それでいいんだということも、どこかで思ってるんだ。